セクシュアリティの歴史とは何か
なぜ歴史の中のLGBTの人々について書くのか。
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なぜ歴史家は日常生活を研究するのか
20世紀半ばまで、歴史学が主に扱っていたのは、戦争、革命、改革、君主の交代といった大きな政治的事件でした。しかし20世紀後半になると、それだけでは過去を十分に理解できないと考えられるようになり、ジェンダー史、心性史、感情史などの新しい分野が生まれました。
なかでも重要になったのが、私生活、人間関係、日々の営みを対象とする日常生活史です。研究者は、行動規範、社会的な儀礼、欲望、習慣、食事、衣服にも目を向けました。私生活もまた、経済や社会構造と同じように、過去を読み解く重要な鍵だと分かったのです。
セクシュアリティの歴史はどのようにして生まれたか
日常生活の研究が進むと、研究者は親密な生活にも目を向けました。セクシュアリティ史は、それぞれの時代の社会が身体についてどう語り、どのような関係を「正常」と認め、何を禁じたのかを調べる分野です。
その中から、性的・ジェンダー少数者の経験を扱うLGBT史も生まれました。
この研究が明らかにした大切な点は、セクシュアリティをめぐる考え方そのものが変化するということです。今日「自然」あるいは「容認できない」とされることが、別の時代には異なる見方をされていました。たとえば、人に生来備わる性質としての「同性愛」という概念は、医学の発展を背景に19世紀後半になって成立したものです。それ以前の社会でも特定の同性間の行為は非難されましたが、性的指向によって人を独立した集団に分類していたわけではありません。
なぜLGBT史を研究するのか
親密な生活は、宗教、法、医学、道徳と密接に結びついています。同性間の関係が社会でどう見られていたかを知れば、その時代の統制の仕組みと自由の境界が見えてきます。性的少数者への態度からは、権力が秩序を維持するために用いた手段を読み取れます。それは、政治上・宗教上の異端者への態度を調べるのと同じくらい重要です。
さらに歴史研究は、人間関係やジェンダー役割の多様性が、現代になって突然現れたものではないことを示します。呼び名も評価の仕方も時代ごとに異なりましたが、多様なあり方は以前から社会に存在していました。歴史を知ることは、過去が「単純で画一的」だったという思い込みを取り払い、現在の規範がどのように形づくられたかを見通しやすくします。
ロシアの歴史におけるセクシュアリティ
欧米では、セクシュアリティ史の研究に数十年の蓄積があります。一方、ロシアでこの主題が学術的関心を集め始めたのは、ソビエト連邦崩壊後の1990年代でした。性的少数者の経験は長く研究の対象外に置かれ、その沈黙が、過去のロシア社会は異性愛者だけで構成されていたという神話を強めました。しかし史料は、人々の実際の営みが公的道徳の境界をしばしば越えていたことを示しています。
同性間の関係に対するロシアの国家と社会の態度も、時代とともに変化しました。迫害の程度は、法規範、文化的観念、権力者の利害、地域の伝統によって左右されます。比較的寛容な時期の後に、死刑を含む厳罰の時代が訪れることもありました。
時期によっては、ロシアの方が一部のヨーロッパ諸国より寛容だったこともあります。大きな転換はソビエト時代(1922~1991年)に起きました。国家が道徳を厳しく統制し、新たな規範を制度として定着させたためです。その影響は現在にも及んでいます。
『ウラニア(Urania)』は、ロシアにおける豊かで多様なセクシュアリティの歴史を伝えることを目指しています。それは、文化的記憶とアイデンティティをより正確に理解するためです。
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