ロシアの動画配信大手アメディアテカ、海外ドラマから75時間を削除 — 検閲の半分以上がLGBT関連
 (CC BY-SA 3.0)](/news/2026/1012-amediateka-censorship-lgbt-series/cover.webp)
2026年10月12日、ロシアの独立系調査報道メディア「メディアゾナ(Mediazona)」は詳細なデータ調査を発表し、ロシアの大手動画配信サービス「アメディアテカ(Amediateka)」がカタログ内の海外テレビドラマのほぼ半分を組織的に検閲し、累計で約75時間分の映像をカットしていたことを明らかにした。削除された映像の半分以上にあたる44時間超が、LGBT+のテーマや登場人物に直接関わる場面だった。
メディアゾナの調査によると、調査チームは配信中の462作品を対象に、海外のオリジナル版とロシア国内配信版を1フレーム単位で比較する独自アルゴリズムを開発した。その結果、368作品で再編集の痕跡が確認され、少なくとも200作品で明確な検閲が実証された。研究者らは9,500以上の場面を手作業で検証し、技術的な編集差や日米欧のフレームレート差(米国の23.976fpsに対しロシア・欧州は25fps)を補正した。約57時間の部分的なシーン削除に加え、禁止テーマを理由に配信カタログからエピソードやシリーズ丸ごと削除された事例(約18時間分)も総計に含まれている。
検閲対象として最も大きな割合を占めたのがLGBT+関連の描写である。『シックス・フィート・アンダー』(約3時間カット)、『ザ・ソプラノズ』、『セックス・アンド・ザ・シティ』、『ユーフォリア』、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』、『Why Women Kill』などの名作ドラマにおいて、キスシーンや親密な場面だけでなく、同性愛関係の展開、カミングアウト、トランスジェンダーに関する重要な物語全体が排除された。検閲の手は、レインボーフラッグや衣類の虹色模様、さらにはトランスジェンダー記者が制作した無関係な一般ドキュメンタリーにまで及んだ。さらに吹き替え制作スタジオは配信元の内部指針に従い、セリフ中の「ゲイ」を「違う人」と言い換え、同性パートナーを単なる「友人」と呼び、オーラルセックスを「キス」と翻訳するなど改変を行っていた。
このほか検閲された分野には、政治(ウラジーミル・プーチンやウクライナ侵攻への言及、ソ連史への批判を含む12時間)、近親相姦や虐待などのタブー(『ゲーム・オブ・スローンズ』のラニスター家の描写を含む4.5時間以上)、薬物や医薬品(違法薬物から市販薬、架空の薬物まで含む4時間40分)、非伝統的とされる性行動(4時間)、自殺(1時間)、中絶や子供を持たない選択に関する話題(52分)が挙げられる。アメディアテカ側は取材に対し回答していない。一部作品の権利を持つ米AMCは、世界各国の放送事業者が地域の規範に適合させる慣習があるとコメントし、米HBOはロシア国内で有効なライセンス契約を結んでいないと回答した。
2013年にロシアの映画制作会社アメディアによって設立されたアメディアテカは、HBO、Showtime、AMC、ワーナー・ブラザース作品のロシア国内独占ライセンシーとして中心的な位置を占めており、キノポイスク(Kinopoisk)やOkkoなど国内他社にも吹き替え版を提供している。今回の大規模な削除は、ロシア国内での急激な法規制強化を背景としている。2022年末に全年齢を対象とする「非伝統的性関係プロパガンダ禁止法」が成立し、2023年11月には最高裁判所が「国際LGBT運動」を過激派組織に指定した。アメディアテカ自体もLGBTコンテンツの配信や年齢レーティング違反を理由に、ロシアの裁判所から複数回にわたり過料処分を受けている。
本誌『ウラニア』は、ロシアにおけるデジタルメディアへの弾圧と検閲の実態を継続して報じている。以前にも、2025年にロシアの裁判所が動画配信サービスや出版社に対して約6,900万ルーブルのLGBT関連過料を命じた司法統計や、LGBTを題材とした劇映画の国内配信を司法判断で禁止した事例について詳しく伝えている。


