米アリゾナとバージニア両州、トランプ政権の規則を受け未成年者の性別適合治療に対するメディケイド適用を停止

2026年10月、米国の民主党知事が率いるアリゾナ州およびバージニア州の両当局は、低所得者向け公的医療保険「メディケイド(Medicaid)」および児童医療保険「CHIP」において、未成年者を対象とした性別適合医療の保険適用を停止することを決定した。この措置は、ドナルド・トランプ米大統領の政権が打ち出した連邦補助金の打ち切り方針に従い、2026年10月13日(火)付で発効する。
2026年8月13日に米保健福祉省(HHS)およびメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が確定させた連邦規則は、18歳または19歳未満の患者に対する思春期ブロッカーやホルモン療法の費用について、連邦政府の補助金を充当することを禁じた。政権側はこれらの医療行為を「実験的で潜在的に危険」と主張しているが、米国医師会(AMA)や米国小児科学会(AAP)など主要な医学会はこの見解に強く異を唱えている。連邦規則は各州が独自予算のみで保険適用を維持することを禁止しておらず、カリフォルニア、イリノイ、マサチューセッツ、オレゴンなど少なくとも6つの民主党主導の州が州単独財源による継続を選択した。また、全米21州の連合が連邦規則の違法性を主張して訴訟を起こしている。
米国の報道機関 The Advocate によると、バージニア州の医療支援局(DMAS)は医療機関に対し、性別違和に関する治療について18歳未満のメディケイド対象者および19歳未満のCHIP対象者への適用を終了すると通知した。すでに治療を開始している若年層に対しては、処方薬を安全に減薬するための6カ月間の経過措置期間が設けられている。バージニア州の民主党知事アビゲイル・スパンバーガー氏はホワイトハウスを厳しく批判し、トランプ政権がトランスジェンダーの児童を政治的思惑のための「道具(ポーン)」にしていると非難した上で、州として法的対応を検討中であると述べた。同州のジェイ・ジョーンズ司法長官は他州による連邦訴訟に参加した。知事側の関係者は、州議会の通常会期が規則発表の数カ月前に閉会していたため、臨時議会を招集しない限り州予算の組み替えが不可能だったと説明している。
政策分析メディア Transitics News によると、アリゾナ州のメディケイド運営機構(AHCCCS)も医薬品リストを改定し、10月13日より19歳未満に対する思春期遮断薬およびホルモン剤の費用拠出を打ち切ることを決定し、同様に6カ月の移行期間を設定した。これまでトランスジェンダーの若年者向け医療を禁じる共和党主導の法案に繰り返し拒否権を行使してきたケイティ・ホッブス州知事は、州予算の単独支出を行わない姿勢をとっている。また、アリゾナ州のクリス・メイズ司法長官は他州の提訴への参加を見送った。専門家らは、2026年11月の中間選挙を控える中で、激戦州(スイング・ステート)としての慎重な政治的配慮が背景にあると分析している。なお、これに先立ちカンザス州の民主党知事ローラ・ケリー氏もメディケイド適用制限に同意していた。
アリゾナとバージニアの決定は、2026年の選挙戦を前にして、トランスジェンダーの権利と医療をめぐる米民主党内部の温度差と戦略的対立を浮き彫りにしている。本誌『ウラニア』はこれまでに、保守派からの広告攻勢を受けて民主党の穏健派候補がトランスジェンダー問題から距離を置く動き、オハイオ州民主党のLGBTQ+コッカス内で起きた内部対立、そしてテキサス州上院選候補ジェームズ・タラリコ氏の姿勢をめぐる論争について詳しく報じてきた。


