ニュース オーストラリア

豪タスマニア州でLGBT転向療法禁止法案をめぐり激しい論争が勃発

タスマニア州ホバートの議会議事堂。写真:Sofia / Wikimedia Commons(CC0)
タスマニア州ホバートの議会議事堂。写真:Sofia / Wikimedia Commons(CC0)

2026年10月初旬、オーストラリアのタスマニア州において、性的少数者(LGBT)の性的指向や性自認を強制的に変更・抑圧しようとするいわゆる「転向療法(コンバージョン・プラクティス)」を禁止する法案を巡り、政界や市民社会で激しい議論が巻き起こっている。タスマニア緑の党が州議会下院に提出したこの法案は、10月27日の議会再開以降、本格的な審議入りが予定されている。

提出された「2026年転向療法禁止法案(Conversion Practices Prohibition Bill 2026)」は、悪質な転向行為に対して刑事罰を科すとともに、州差別是正委員会の監督下で予防教育や民事的な是正措置を講じる仕組みを整える内容となっている。自由党のジェレミー・ロックリフ州首相は党内議員に対して党議拘束を外す「良心投票(conscience vote)」を認めた。ロックリフ首相自身は法案の文言修正を求めつつも原則的な禁止に賛意を示しているが、フェリックス・エリス警察相は信教の自由や親の養育権への懸念を理由に反対票を投じると表明した。一方、労働党や無所属議員らは賛成する方針を示している。

権利擁護団体「LGBアライアンス・オーストラリア」が公表した分析記事によると 、議会に提出された法案は生物学的性に基づく権利を訴える専門家や活動家から強い懸念を招いている。同団体は、パブリックコメント後にタスマニア州反差別法における「性的指向」の法的定義が書き換えられた点を指摘した。従来の異性・同性・両性への性的惹きつけという定義から、「同性(ジェンダー)、異性(ジェンダー)または複数のジェンダー」への惹きつけへと変更され、アセクシュアルも追加された。同団体は、これが法律上において生物学的性を性自認概念へとすり替えるものだと批判している。さらに、国家規制機関Ahpraに登録されていないカウンセラーや心理療法士、ソーシャルワーカーに対する法的な免責条項が曖昧であり、苦悩を抱える若者に対する探求的な対話において第三者から通報されるリスクがあると警告した。

これに対し、タスマニア緑の党のロザリー・ウッドラフ党首やビカ・ベイリー議員らは、この法案が転向療法の有害性を実証した2022年の州法改革研究所(TLRI)の報告書に基づき、2年間の準備を経て作成されたものであると反論している。賛成派は、善意に基づく正当な医療行為や結論を誘導しない自己探求、ディトランジション支援、家庭内の対話、宗教的な祈りは明確に禁止対象から除外されていると強調し、すでに禁止法を制定しているビクトリア州やニューサウスウェールズ州など豪州各州に並ぶための不可欠な法制化であると主張している。

LGBアライアンス・オーストラリアは、生物学的性に基づく同性愛者・両性愛者の権利を守るために英国で発足した同名団体の豪州組織であり、法制度における性の概念解体や未成年者への性別移行医療の安易な適用に反対の立場をとっている。

転向療法禁止法の適用範囲や、生物学的性とジェンダーアイデンティティの法的境界をめぐる議論は欧米諸国で続いている。「ウラニア」は過去に、英国保守党大会でのLGBアライアンスの活動 、スイスにおける転向療法禁止法案の審議状況 、オーストラリアにおける女性専用空間をめぐる裁判 などを詳しく伝えている。

関連資料

最新ニュース

米キリスト教団体「The Center for Faith」、伝統的教会にLGBT信徒の受容を呼びかけ 権利団体「LGB International」、バイセクシュアル可視化の日に合わせて当事者手記集を刊行 伊カトリック司教、ゲイプライド主催者に対話を提案