ロシア保健省、「服装倒錯」やBDSMを対象とした新たな治療指針を承認
2026年9月16日、ロシア連邦保健省の科学実践評議会は、専門家団体「ロシア精神医学会」が策定した臨床診療ガイドライン「性嗜好の障害」を承認した。国家の公式臨床ガイドライン集に登録されたこの文書は、国際疾病分類第10回改訂版(ICD-10)のF65項目に分類される疾患の診断と治療に関して、長年で初めて法的に義務付けられた基準となる。ロシアのLGBTQ+専門メディアParni PLUSの報道 によると、承認されたリストにはフェティシズム、露出症、窃視症、小児性愛、サドマゾヒズムのほか、人権団体やトランスジェンダー当事者の間で懸念が高まっている「フェティシズム的異性装」の診断が含まれている。
医療専門メディアMedvestnik および全国紙コメルサント によると、同分野における保健省の旧指針は1999年に制定され2012年に失効しており、2023年に同学会が提出した草案は承認されなかった。2025年以降、保健省の診療ガイドラインは民間クリニックを含むロシア国内のすべての医療機関において義務化されている。治療法としては認知行動療法(CBT)が基本とされ、必要に応じてSSRI系抗うつ薬(フルオキセチンやセルトラリン)が併用されるほか、重度の障害や性犯罪に対しては抗アンドロゲン剤やGnRH誘導体が定められている。心理療法の項目には嫌悪療法やオルガズム再条件づけなどの行動変容技術も記載されている。
作成者は、ロシア政府が「伝統的価値観の保護」を理由に2024年初頭にICD-11への移行を凍結したため、ICD-10の基準を踏襲したと説明している。世界保健機関(WHO)のICD-11ではパラフィリア障害の定義が大幅に見直され、合意の欠如または身体的危害・死亡の重大なリスクのみが病理性とされ、成人の合意に基づくフェティシズムやフェティシズム的異性装は疾患リストから完全に除外された。
人権擁護派や精神保健の専門家は、拘束力のある診療基準に「フェティシズム的異性装」(F65.1)を残すことが、トランスジェンダー当事者に対する誤診や偏見による病理化を招く恐れがあると警鐘を鳴らしている。ロシアでは2023年7月に性別移行に関する医療と戸籍変更を全面禁止する法律が施行され、性同一性障害(F64)の指針作成も停止されているため、トランス当事者が性的逸脱と診断され「治療」名目の転向療法を強いられるリスクが指摘されている。ただしガイドライン作成者は、持続的な主観的苦痛や社会的適応不全がない限り、異性の衣服の着用や空想のみでは診断基準を満たさないと言及している。
ロシア精神医学会(ROP)は19世紀末に起源を持つ国内最古の精神医学専門家組織であり、V・P・セルブスキー記念国立精神医学・嗜癖学研究センターの研究者らを含む指導的専門家で構成されている。同組織は、LGBT+コミュニティに対する国家の規制強化が進む中で公式診療基準の策定を担っている。
これまでに「ウラニア」は、ロシアの裁判所がヴィホト(出ロ)、センターT、そしてParni PLUSを含む9つの独立系LGBT+団体を「過激派」に指定して活動を禁止したこと や、国連ロシア特別報告者が国外亡命したロシア人LGBT+当事者や活動家への越境弾圧に関する調査報告書を提出したこと を報じている。\n


