『Len & Cub : une histoire queer』— 20世紀初頭カナダ農村のクィアの愛を紐解くメレディス・バットとダスティ・グリーンの著書
20世紀初頭のカナダ農村における同性カップルの写真アーカイブを読み解く歴史的調査。

2026年9月9日、カナダのフランス語系出版社ペルス=ネージュ(Éditions Perce-Neige)より、歴史写真研究論集『Len & Cub : une histoire queer』(『レンとカブ:クィアな歴史』)がフランス語で刊行された。本作はアーキビストのメレディス・J・バット(Meredith J. Batt)とダスティ・グリーン(Dusty Green)が調査・執筆を担当し、ピエール=アンドレ・ドゥセ(Pierre-André Doucet)がフランス語翻訳を手がけた。英語の原著『Len & Cub: A Queer History』は、2022年にグース・レーン・エディションズ(Goose Lane Editions)から出版されている。
メレディス・バットはフレデリクトンのニューブランズウィック州立公文書館でアーキビストを務める傍ら、市民団体「ニューブランズウィック・クィア遺産イニシアチブ」(QHINB)の代表として活動している。2022年には、地域のクィア史保存への多大な貢献が評価され、エリザベス女王プラチナ・ジュビリー・メダルを受章した。共著者のダスティ・グリーンは広報専門家であり同団体の設立者で、かつて同州立公文書館やフレデリクトン地域博物館に勤務していた。公文書館の収蔵庫から忘れ去られていたレン・キースの写真アルバムを発見し、本プロジェクトの契機となった私家版フォトブックを作成したのもグリーンである。2022年の英語版は、インディペンデント・パブリッシャー・ブック・アワード(IPPY Award)のカナダ東部地域ノンフィクション部門で金賞を受賞した。
本書の中心となるのは、ニューブランズウィック州の小さな農村ハヴロックで隣人同士として育ったレナード・「レン」・キース(Leonard “Len” Keith、1891–1950)とジョセフ・「カブ」・コーツ(Joseph “Cub” Coates、1899–1965)の親密な愛と絆である。自動車と機械に夢中だったレンは修理工場と玉突き場を経営し、農家の息子だったカブは精肉業や土木工事に従事しながら馬を深く愛した。1905年、キース家は当時の農村では極めて珍しかった携帯型コダックカメラを購入した。熱心なアマチュア写真家となったレンは、1910年代から1920年代にかけて二人の日常をつぶさに記録していった。ドライブ、カヌーでの旅、狩猟、仲間との宴、そして軍の演習キャンプ。当時の硬直したスタジオ肖像写真とは対照的に、レンのスナップショットには率直な愛情が溢れている。二人は固く抱き合い、手を握り、ベッドで寄り添ってカメラを見つめている。
第一次世界大戦中の1918年、キースとコーツは工兵としてカナダ陸軍工兵隊に入隊し、ヨーロッパでの従軍を経て1919年に帰郷した。しかし1920年代末には二人の恋愛関係は幕を閉じ、保守的な農村社会の視線は厳しさを増していった。当時のカナダ刑法は同性愛行為を厳罰に処していた。1931年、村人によるアウティングと刑事告発の脅迫に直面したレン・キースは、故郷ハヴロックを永遠に追われることとなった。彼は米国へ移住して余生を過ごし、1950年に世を去った。一方のカブ・コーツはカナダに留まり、後に女性と結婚して1965年に亡くなった。
この奇跡的な写真記録は、1984年に遺品オークションでアルバムを買い取り公文書館に寄贈した個人の収集家によって守られた。これらの写真は、大西洋沿岸のカナダおよび北米の農村地域において現存する最も古い同性カップルの視覚的記録の一つである。バットとグリーンの研究は、「20世紀初頭のクィア文化は大都市にのみ存在した」という固定観念を覆すものである。フランス語版には115枚以上の貴重なアーカイブ写真と詳細な歴史解説が収められ、忘れ去られていた二人の記憶をフランコフォニーの世界に蘇らせている。






